カソードフォロワのIpカーブはどのように測定すればよいのか、あれこれ実験した末、下の図のようなシンプルなものにたどり着きました。まずは3極管接続時の計測から行います。


               


そして得られたのが下のカーブです。当初はこの風変わりなカーブをどう理解して良いのか見当もつきませんでしたが、毎日眺めている内に理解できて来ました。

赤い数字はグリッド電圧Egで、0Vから350Vまで変化させました。これはグリッドカソード間電圧ではなく、アースグリッド間電圧です。


            


まずEg=0Vの時はカソードに高抵抗が入った自己バイアス回路となるためずっとカットオフ状態が保たれ、単なる抵抗器のような傾きを持った直線となります。

Eg=50VではEpが50Vになるまでグリッド電圧の方が高いので、グリッド電流のみ流れますが、Ipは流れません。そしてEpが50Vを越えたあたりからグリッド電圧を越えるので、急にプレート電流が流れ出します。

具体的には下のグラフのように、プレート電圧70Vで、プレート電流が20mA流れ、そのときカソード電圧は40Vとなっているとわかります。





しかしEpのさらなる上昇によってIpも増え、それによりカソード電圧が上昇するため、一定の電流値から再びカットオフのような状態が発生します。

あとはEgの上昇に従い同様の繰り返しが起こり、こうしたカーブができるわけです。そこで見やすくするため、実用上不要と思われる0V及び50V時を無視して計測してみたのが下の図になります。


            


片特性部分以下の立ち上がったカーブが、平行移動している様子がわかるように補助線も入れてみました。グラフには入り切りませんが、この片特性は300Vや350Vの時でもグラフ上方で起きています。

この図中Egが200Vから350Vまで150V変化した時、Ip=50mAのラインをサンプルとして見ると、プレート電圧が200Vから330Vまで130V変化しています。


            


よって増幅度μは1以下の130÷150=0,87ということが読み取れます。

ところでこの特性カーブからロードラインが引けるかというと、それは無理、というか、このカーブ自体すでに2kΩ負荷の動作状態を示す動特性なのです。

カソードフォロワは測定時、負荷抵抗をつながないと計測が出来ないため、負荷抵抗ごと別のカーブとなってしまうわけです。さらに普通の3極管接続によるカーブからGmを求めると。


            


Gm=5,5mS、μ=7,5となり、通常の3極管接続時、内部抵抗は1,36kΩとわかりました。一般的に内部抵抗はμ÷Gmで計算され、カソードフォロワではμ=1とされていますから1÷5,5=0,182kΩ(182Ω)のはずです。

しかし先ほどの計測結果ではμ=0,87なので、内部抵抗は87%の158Ω程度と、やや低く予測されます。またゲインは1倍ではなく0,87倍と予測されます。

次はいよいよ5極管接続によるカソードフォロワーの計測にはいります。




つづく

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その1、 3極管接続を計測する